GENJI 和歌 Collection Part 1-2（須磨～乙女）

～　身はかくて　さすらへぬとも　君があたり　
　　　　　　　去らぬ鏡の　かげははなれじ　～

　　源氏

～　別れても　影だにとまる　ものならば　
　　　　　　　鏡を見ても　なぐさめてまし　～

　　紫の上

～　浦人うらうどの　塩汲む袖に　くらべ見よ　
　　　　　　　波路隔つる　夜の衣を　～
紫の上　　

～　月影の　宿れる袖は　狭くとも　
　　　　　　　とめてぞ見ばや　飽かぬ光を　～
　　　花散里の君

～　行きめぐり　つひにすむべき　月影の　
　　　　　　　しばし曇らん　空なながめそ　～
　　源氏

～　見しは無く　有るは悲しき　世のはてを　
　　　　　　　背きしかひも　なくなくぞ経ふる　～
　　　藤壺の宮

～　別れしに　悲しきことは　尽きにしを　
　　　　　　　またもこの世の　憂うさは勝まされる　～
　　源氏

～　はるかにも　思ひやるかな　知らざりし　
　　　　　　　浦より遠をちに　浦づたひして　～

　　源氏

～　なほざりに　頼めおくめる　ひとことを　
　　　　　　　つきせぬ音ねにや　かけてしのばん　～
明石の君　　

～　逢ふまでの　かたみに契る　中の緒の　
　　　　　　　しらべはことに　変はらざらなん　～
源氏　　

～　一人して　撫づるは袖の　ほどなきに　
　　　　　　　覆ふばかりの　蔭かげをしぞ待つ　～

　　明石の君

～　みをつくし　恋ふるしるしに　ここまでも　
　　　　　　　めぐり逢ひける　縁えには深しな　～
源氏大臣　　

～　数ならで　なにはのことも　かひなきに　
　　　　　　　何みをつくし　思ひ初めけん　～
明石の君　　

～　わびぬれば　今はた同じ　難波なる　
　　　　　　　みをつくしても　逢はんとぞ思ふ　～
　　　元良親王（後撰集）

～　みをつくし　恋ふるしるしに　ここまでも　
　　　　　　　めぐり逢ひける　縁えには深しな　～
　　源氏大臣

～　数ならで　なにはのことも　かひなきに　
　　　　　　　何みをつくし　思ひ初めけん　～
　　明石の君

～　年を経て　待つしるしなき　わが宿は　
　　　　　　　花のたよりに　過ぎぬばかりか　～
末摘花の君　　

～　わが身こそ　うらみられけれ　唐衣からころも　
　　　　　　　君がたもとに　なれずと思へば　～
　　　末摘花

～　唐衣　またからころも　からころも　
　　　　　　　かへすがへすも　からころもなる　～
　　源氏大臣

～　ひとりゐて　嘆きしよりは　海人あまのすむ　
　　　　　　　かたをかくてぞ　見るべかりける　～
紫の上　　

～　うきめ見し　そのをりよりは　今日はまた　
　　　　　　　過ぎにし方に　帰る涙か　～
源氏内大臣　　

～　行くさきを　はるかに祈る　別れ路ぢに　
　　　　　　　たへぬは老いの　涙なりけり　～
明石入道（明石の君の父）　　

～　もろともに　都は出いでき　このたびや　
　　　　　　　一人野中の　道に惑はん　～
明石尼君（明石の君の母）　　

～　変はらじと　契りしことを　頼みにて　
　　　　　　　松の響に　音ねを添へしかな　～
明石の君　　

～　末遠き　二葉の松に　引き分かれ　
　　　　　　　いつか木高き　かげを見るべき　～
明石の君　　

～　生おひ初めし　根も深ければ　武隈たけくまの　
　　　　　　　松に小松の　千代を並べん　～
源氏内大臣　　

～　秋果てて　霧の籬まがきに　むすぼほれ　
　　　　　　　あるかなきかに　うつる朝顔　～
朝顔の君　　

～　改めて　何かは見えん　人の上に　
　　　　　　　かかりと聞きし　心変はりを　～
朝顔の君　　

～　くれなゐいの　涙に深き　袖の色を　
　　　　　　　浅緑とや　言ひしをるべき　～
夕霧　　

～　風に散る　紅葉は軽し　春の色を　
　　　　　　　岩根の松に　かけてこそ見め　～
紫の上　　

Chapter 12. とりあえず謹慎します。　（須磨）

～　浦人うらうどの　塩汲む袖に　くらべ見よ　
　　　　　　　波路隔つる　夜の衣を　～
紫の上　　

Chapter 21. 小さな恋のものがたり　（乙女）

～　風に散る　紅葉は軽し　春の色を　
　　　　　　　岩根の松に　かけてこそ見め　～
紫の上　　

～　行きめぐり　つひにすむべき　月影の　
　　　　　　　しばし曇らん　空なながめそ　～
　　源氏

【別冊】GENJI topics 8.

～　逢瀬あふせなき　涙の川に　沈みしや　
　　　　　　　流るるみをの　初めなりけん　～
　　　源氏

【別冊】GENJI topics 8.

～　見しは無く　有るは悲しき　世のはてを　
　　　　　　　背きしかひも　なくなくぞ経ふる　～
　　　藤壺の宮

～　入日さす　峰にたなびく　薄雲は　
　　　　　　　もの思ふ袖に　色やまがへる　～
源氏内大臣　　

Chapter 13. 最高のカノジョと最愛のツマ　（明石）

～　なほざりに　頼めおくめる　ひとことを　
　　　　　　　つきせぬ音ねにや　かけてしのばん　～
明石の君　　

～　逢ふまでの　かたみに契る　中の緒の　
　　　　　　　しらべはことに　変はらざらなん　～
源氏　　

～　一人して　撫づるは袖の　ほどなきに　
　　　　　　　覆ふばかりの　蔭かげをしぞ待つ　～

　　明石の君

Chapter 14. 命をかけて……　（澪標）

～　みをつくし　恋ふるしるしに　ここまでも　
　　　　　　　めぐり逢ひける　縁えには深しな　～
源氏内大臣　　

【別冊】GENJI topics 9.

～　わびぬれば　今はた同じ　難波なる　
　　　　　　　みをつくしても　逢はんとぞ思ふ　～
　　　元良親王（後撰集）

～　みをつくし　恋ふるしるしに　ここまでも　
　　　　　　　めぐり逢ひける　縁えには深しな　～
　　源氏内大臣

～　数ならで　なにはのことも　かひなきに　
　　　　　　　何みをつくし　思ひ初めけん　～
　　明石の君

Chapter 18. ふたりの女性と娘のこと　（松風）

～　行くさきを　はるかに祈る　別れ路ぢに　
　　　　　　　たへぬは老いの　涙なりけり　～
明石入道（明石の君の父）　　

～　もろともに　都は出いでき　このたびや　
　　　　　　　一人野中の　道に惑はん　～
明石尼君（明石の君の母）　　

～　変はらじと　契りしことを　頼みにて　
　　　　　　　松の響に　音ねを添へしかな　～
明石の君　　

Chapter 19. 永遠の人　（薄雲）

～　末遠き　二葉の松に　引き分かれ　
　　　　　　　いつか木高き　かげを見るべき　～
明石の君　　

Chapter 15. シンデレラストーリー？　（蓬生）

～　尋ねても　われこそ訪とはめ　道もなく　
　　　　　　　深き蓬の　もとの心を　～　
源氏内大臣　　

～　藤波の　打ち過ぎがたく　見えつるは　
　　　　　　　まつこそ宿の　しるしなりけれ　～
源氏内大臣　　

【別冊】GENJI topics 10.

～　わが身こそ　うらみられけれ　唐衣からころも　
　　　　　　　君がたもとに　なれずと思へば　～
　　　末摘花

～　唐衣　またからころも　からころも　
　　　　　　　かへすがへすも　からころもなる　～
　　源氏内大臣

Chapter 16. 逢えなくても好き　（関屋）

～　行くと来くと　せきとめがたき　涙をや　
　　　　　　　絶えぬ清水と　人はみるらん　～
空蝉の君　　

～　秋果てて　霧の籬まがきに　むすぼほれ　
　　　　　　　あるかなきかに　うつる朝顔　～
朝顔の君　　

～　改めて　何かは見えん　人の上に　
　　　　　　　かかりと聞きし　心変はりを　～
朝顔の君　　

Chapter 21. 小さな恋のものがたり　（乙女）

～　くれなゐいの　涙に深き　袖の色を　
　　　　　　　浅緑とや　言ひしをるべき　～
夕霧