topics 34. 恋愛下手 VS 恋愛恐怖症?!
2022-01-09GENJI topics Part2第三十九帖,女二宮,雲居の雁,源氏topics,夕霧,光源氏,源氏物語,紫式部,超訳
GENJI 【別冊】
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topics 34
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GENJI 【別冊】GENJI エッセイ
本章はGENJI topics です。
源氏物語のエピソードにまつわる管理人の雑感エッセイです。
あくまでも管理人の独断と偏見エッセイです。ゆる~く眺めてやってください。皆さまのまなじりが一瞬でも下がったり、口角が数ミリ上がったり、クスクス笑いのひとつでも漏れたのなら、管理人の望外の喜びとなります。
topics 34. 恋愛下手 VS 恋愛恐怖症?!
第三十九に寄せて
✈✈✈ Let’ go to GENJI world ✈✈✈
純愛一途に初恋をみのらせて幼なじみと結婚
真面目で融通がきかない
本妻と側室の元を1日おきに通う律儀さ
本妻とのあいだに8人、側室とのあいだに4人の子ども
そんな彼が大人の恋に目覚めた?!
恋しいお相手は友達の未亡人
ちなみにその友達は嫁の兄
夕霧くんが恋をしてしまいました。
台風のときに見かけた紫の上の美しさに度肝を抜かれてドキドキ胸をときめかせて憧れるけれど、そこはちゃんと自重して過ちを犯そうとはしなかった夕霧くん。
柏木が女三宮との「道ならぬ恋」をしているときも友人として心配していた夕霧くん。
でも今回は「恋に落ち」ましたね。恋なんてしようと思ってするものじゃなくて気が付いたら落ちているものだとはよく言ったものです。
夕霧は既婚者だけど女二宮は未亡人なので平安時代的には「道ならぬ恋」ではないけれど、「真面目でカタブツ」キャラの夕霧くんの浮気沙汰?! ですね。
Matcha Macaroons
明朗快活な正室の雁ちゃんに陰ながら夕霧くんを支えてあげる側室典侍ちゃん
どちらも子だくさんで賑やかだけど騒がしく所帯じみた家庭
亡くした夫を偲んでひっそり暮らす落ち葉の宮さま(女二宮)。
もちろん顔を見たことはないけれど、お母さんはいい人だし、お宅のセンスもいい。
控えめなカンジもなんかそそられる。
月を眺め、歌を詠み、琴を爪弾き……。
情緒ある風情が真面目な心に小さな芽吹きをもたらす。
そしていつしか心の芽はひっそり恋の花を咲かせる。
ダンナを亡くして悲しんでいるから僕が慰めてあげたい。
アイツだって彼女を頼むって言っていた。
これからはアイツのかわりに僕が幸せにしてあげたい。
アイツより僕の方が彼女を愛してる。
最初は柏木の遺言で見舞っていたけれど、いつしか友達への友情以上の気持ちで宮さまを訪ねるようになります。
母親の療養先の小ぢんまりした山荘で立ち込める霧
(夕霧くんの名前の由来の霧ですね)
女房たちがお母さんのところに行って少なくなる人の気配
そんなチャンスに夕霧くん思い切って御簾内に侵入
「母一人子一人で心細いだろうと思って来てるんだよ」
「何年も来てて僕の誠実さは伝わっているでしょ?」
「あなたに逢うための口実でお母さんのお見舞いもしてるんだよ」
「もう何年も通ってるんだよ。気持ちくらい聞いてよ」
理路整然と口説く、というか説得? 僕って安全安心でしょ? 面倒みてあげてるからいいでしょ? みたいなカンジ?
Matcha Soft Cream
そこはお父さんみたいに
「こうなることは、生まれる前からの運命だったんだよ」
「キミに出逢うために僕は生まれてきたんだ」
って夢みたいなことをうっとりと囁くもんじゃないの?
(そんなこと誰にでも言ってるくせに……)って思いながらも目の前のイケメンに言われたら、ついうっかりクラッときちゃうんだから女子は。
夕霧くんってパパそっくりの容姿だけれど、中身はパパと正反対ですものねぇ。
「好きだ。好きだ。死ぬほど好きだ」
「こんなにもキミを想ってる」
主語は全部源氏です。とにかく自分の気持ちを伝える。たっぷりの甘さをトッピングして。その言葉に女子は酔っちゃうのです。心を奪われちゃうのです。
俺たちを照らすために月は昇るんだよ。キミが望むなら星だってとってあげる。花なんかキミの美しさを引き立てるだけだよ。鳥は俺たちを祝福して歌っているよ。
花鳥風月すべてを小道具にロマンチックにドラマチックに迫ります。
まあね、罪をおかすときもそうでないときもいつでも「本気」でドラマチックなのは検証の余地がありますけれどね。
「好きだから振り向いてよ」
「手紙の返事くれないの?」
「ヒドイことはしないから声だけでも聞かせてよ」
夕霧くんのセリフは女二宮へのリクエストばかり。こんなに真面目だからこっち向いてよ、僕も好きだから僕のこと好きになってよ。理由を述べて結果を要求。まるで交渉か商談のよう。これでは心の扉は開きません。
「バツイチのキミをもらってあげる人なんて僕以外にいないよ?」
間違ったことは言っていないけれど、言い方ってものがあると思う。ただでさえ愛されなかった夫に先立たれ、もう恋愛も結婚も懲り懲りって思っている人がこんな言い方されて「そうね、じゃあお世話になりまぁす」なんて思うワケないじゃん。ねぇ?
源氏も夕霧も相手と恋愛関係になりたいという目的は一緒でも、もっていきかたが違いますよね。
誰かさんとは違って恋愛下手な夕霧くん。
まあ、パパとは場数が違いますもんね。
Matcha Donuts
それになんだろう、夕霧くんの口説き方が重苦しいんです。源氏パパの恋物語の方が軽やかというか、あまり罪悪感めいてなく感じてしまうんですよね。(それはそれでモンダイ?)「浮気」がウワキなんだか判定しかねます。どれも本気で口説いてるから? ウワキな本気? あ、誤解しないでくださいね。源氏くんを褒めているわけではありませんよ。
夕霧くんの「浮気」もウワキでなく「本気」なんだろうけど、重い。固い。本気の浮気?
それでも御簾内に侵入したものの「ヒドイことはしないから」と同意のないまま一線を越えることはせずに朝帰りします。いや、それはいいんですよ。髭黒や柏木みたいな犯罪はしちゃいけませんから。珍しく感情のままに御簾内には入っちゃったけれど、相手の女二宮さまの気持ちも考えてあげられました。クドイようですが髭黒や柏木と違って夕霧くんそこはエラかった。(というより現代的には髭黒や柏木がNGです)
けれども当時なら深い仲になっちゃっただろう夜にそうはならずにふたりは夜明けを迎えます。
「何もなかったのに何かあったみたいに帰らなきゃじゃん」
「拒否ったわたくしを悪者にするの?(突然侵入してきたあなたは悪くないの?)」
恋愛下手と恋愛恐怖症のなんだかとっても気まずい朝
なにもなかったのに朝帰り
しかも目撃されて周囲から勘違いされる
なにもなかった、とは白状しにくい恋愛下手クン。
なにもなかった、と話すことすら疎ましい恋愛恐怖症サン。
O-Sencha
結婚初夜も部屋に入れてもらえない夕霧
どこまでも拒み続ける女二宮
女二宮との結婚に傷ついた雲居の雁の家出
前途多難な夕霧くんです。数々の修羅場をくぐりぬけてきている源氏とここでも好対照なのかな。いや、だからってパパを見習えって言ってるんじゃないですからね。
女二宮さん、自分は少しも浮ついてないんです。勝手に想われて勝手に外堀を埋められて結婚せざるを得なくなってしまったんです。色恋沙汰なんてもういや。亡き夫とお母さんを偲んでひっそり過ごしていきたいの。放っておいて。それでも「内親王の再婚」という事実だけをとりあげられて「非常識」だとか「軽々しい」と非難されるのです。なんで?
雲居の雁ちゃんの家出ってワタシたちはとても共感しやすいですよね。ダンナが他の人を好きになったから拗ねてふてくされて、実家に帰る。うんうん。わかるよ。幼なじみ婚といい、彼女は一番現代っぽい感覚かもしれませんよね。この家出だって夕霧のことが好きだからこその行動です。ただ物語では「軽はずみな行動」と非難されてしまいます。なんで? どうして??
大和和紀先生は「あさきゆめみし」で男の裏切りに憤る(雲居の雁)のも男の想いを拒む(女二宮)のも女として当然なのにそれすら思ってはいけないの? と紫の上に語らせます。
男の浮気も受け止める。
男の想いは受け入れる。
女子が怒ったり拒んだりすると非難される。
紫の上のようにオットの多重恋愛を表面上は許して認めてあげるのが女子の理想像。
Matcha parfait
納得がいきませんよね。
女子にだって感情はあるのに。
好きだから側にいて欲しいのに。
好きじゃないから放っておいて欲しいのに。
それすら主張させてもらえないなんて当時の女性が気の毒でなりません
自分の夫が他のオンナを好きになっちゃったんだよ。そりゃ怒るでしょ。悲しいでしょ。
亡くなった夫の友達が言い寄ってきたんだよ。そりゃびっくりするでしょ。しかも亡夫の妹のダンナ。好きでもなんでもないのに、親戚がらみでメンド―なことに巻き込まれちゃうなんて嫌じゃん。
夫の浮気を怒ったら「短絡的」って非難されるの?
「あらそう。よかったわね」とでも言わなきゃいけないの?
一方的に男子側から言い寄られてるだけなのに「軽々しい」って非難されるの?
どうすりゃよかったの? 最初の最初から拒絶しなきゃいけなかったの?
夫の友達としての弔問すら断らなきゃいけなかったの?
千年たってもなおテッパン設定の幼なじみ婚は多くの読者の共感を得てみんなに祝福されたのに。
今回のこの恋はどのくらい読者に支持されるのかしら?
式部センセイが描きたいのは女の哀しみ?
お父さんとの対比を際立たせるんなら雲居の雁といつまでも仲良し夫婦ではダメだったのかしら?
子育てに奮闘する奥さんより未亡人?
オトコって結局はそういう生き物?
あのカタブツくんでさえこの展開?
一途にひとりだけを愛し貫くということはそんなにもムズカシイものなのかしらん。
幼いころからの淡いハツコイを見守ってきました。それこそハハのように。
反対されても一途に想いぬき実らせた幼なじみ婚にとっても感動しました。友人のように喜び、あるいは雲居の雁になりきって幸せに浸りました。
今回のことはショックでなりません。源氏の恋のように「アホー、ばかぁ!」と騒げません。絶望の奈落に落ちた柏木の恋とも違います。ひたすら残念。ひたすらタメイキ。あんなに雁ちゃんのことが好きだったのに。共感度ナンバーワンだった夕霧くんだけに裏切られた感がハンパない。
式部センセイは次から次へとさまざまな恋物語を綴ってくださいます。
Mizu-Yokan
& O-Matcha To be continued ✈✈✈
小倉百人一首も【超訳】しています。
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