chara-story 2. 墨染めのこころ 降り積もる想ひ
2023-05-24GENJI キャラ STORY墨染めのこころ,キャラ目線ストーリー,藤壺の宮,光源氏,源氏物語,紫式部,超訳
GENJI 【別冊】
GENJI essay
Character side story Ⅱ
墨染めのこころ 降り積もる想ひ
the heart of ink dyeing
feelings that accumulate
Welcome to SenmojiGenji World!!
GENJI 【別冊】GENJI エッセイ
本章はキャラクターストーリーです。
キャラクター目線で物語を語っています。
どのキャラクターか想像しながら読んでいただけると嬉しいです。
あくまでも管理人の「きっとこんな風に想っていたんじゃないかな」との独断と偏見ストーリーです。
story 2. 墨染めのこころ 降り積もる想ひ
~the heart of ink dyeing ~
✈✈✈ Let’ go to GENJI world ✈✈✈
「母上、おかげんはいかがですか?」
心配そうに覗き込まれるお顔。
帝であらせられるあなたさまにこのような病室においでいただくのは礼を欠いているのですが、おそらくこれが最後の対面となるのでしょう。
なんてあの方に生き写しなのでしょう。
その瞳
そのお顔
お声までも
こうして夢と現の境を彷徨っていると
まるであの方とお逢いしているような錯覚にすら陥ります。
「桜の花を一緒に眺めませんか?」
爛漫の春の象徴のように咲きこぼれる桜。
わたくしの賜った飛香舎の桜もゆるやかな風に花びらが舞い踊ります。
「こちらの物語はお読みになられましたか?」
季節を愛で、書物を読み、感想を語りあい、和歌を詠み、
感受性が豊かで利発なあの方とのひとときはとても楽しいものでした。
爛漫の春
太陽も月もあの方にだけ光を与えているかのようなまぶしい姿
誰をも魅了するその瞳がいつしか愁いを含むようになってきたのは
あの方が元服なさる頃だったでしょうか。
胸の奥底が痛むような感覚を覚えました。
でもその感覚に気づかないようにしました。
「ご成人あそばされたのですからこれからはこのようにいたしましょう」
元服前までは隔たりなくお逢いしていましたが、一人前の公達となられたのですから几帳や屏風、御簾を隔てて対面することになります。
これでいいのです。
あの方は未来のある方
主上さまをお支えし、国政を執りしきっていかれる方
わたくしは距離を置いて見守る立場
そう、母のように
わたくしはあの方の父帝の妃
あの方の亡くなられた御母君の代わりに主上さまの元に上がったのです。
まさに母親代わりの立場
母のように、姉のように
光り輝くあの方を見守っていけばいい
御簾や几帳越しの距離感があの方とわたくしの適切な距離感
あの方はその距離を縮めようとなさる
御簾を
几帳を
取り払い
わたくしの元へと
熱烈なまでの愛の言葉を述べられる
気づかないようにしていた
頑なまでに閉ざしていた
わたくしのこころを揺さぶる
主上さまはわたくしをとても大切にしてくださいます。
かの人にとても良く似ていると涙ぐみながら微笑まれます。
わたくしがお側にいることで主上さまをお慰めできるのであれば
精一杯お努めしなければなりません。
いつもお優しく接してくださる主上さまをお慕いしております。
「本当のあなたを愛しているのは俺なんだ」
主上さまに抱く穏やかで温かな感情とは違うこの心の有様。
ずきずきと
とくとくと
呼吸すら苦しくなるようなこの感情
いけないのです。
このような感情を持ってはいけないのです。
あの方とわたくしでは罪の関係になってしまうのです。
この想いは墨で塗りつぶさなくては
「父さんが愛しているのは母さんであなたは母さんの身代わりにすぎないんだ」
そうかもしれません。
それでもそれを承知で後宮に上がったのです。
主上さまを裏切るわけにはまいりません。
「それ以上こちらにいらしてはなりません」
それでもあの方は近づいてきます。
わたくしのこころの中にまでも
閉じ込めてあるこころの奥底のわたくしの想いに気づかれてしまう。
いけないとわかっているのに拒めない。
あの方のまっすぐな想いから目をそらせない。
塗りつぶした墨色のこころに激流が押し寄せる
「罪は俺ひとりのものです」
「俺がすべての罰を背負います」
あの方はそうおっしゃる。
いいえ。
罪を犯したのはわたくし。
罰を受けるのもわたくし。
秘めた想いを交わした罪
一生その罪を忘れないように下された罰
主上さまは我が子を慈しんでくださいます。
その御心にわたくしの心が押しつぶされます。
主上さまへ贖罪し
あの方に生き写しの我が子と接し
あの方を拒み
罪を悔いてはおりません。
許されようとも思っておりません。
罪を認め罰を受け生きていくのです。
何をおいても我が子を護り
あの方も護っていく。
それがわたくしの愛なのです。
我が子である帝がお帰りになられます。
どうか幸せに。
どうか愛に恵まれますように。
真実は告げられなかったけれど
あなたには命がけであなたを護ってくださる方がいます。
どうか。
どうか幸せな人生を。
「源氏大臣が参られました」
わたくしに愛という感情を教えてくれたあなた
身を挺して帝とわたくしを護ってくださったあなた
「愛している」
「この想いが叶うなら死んでもいい」
数えきれないほどの愛を詠ってくれたのに
ひとことも返すことができませんでした。
この最期のときにもそれは叶いません。
この気持ちを届けることも罪でしょうか。
そのときは罪の関係でなく
愛し合うことができたなら
舞い落ちる桜吹雪
わたくしの想いも
あなたのこころに
降り積もればよろしいのに
わたくしも心から愛しています。
降り積もる想い Character side story Ⅱ 藤壺の宮 side
墨染めのこころ 降り積もる想ひ
~ the herart of ink dyeing ~
To be continued ✈✈✈
小倉百人一首も【超訳】しています。
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