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chara-story 9. 薔薇のような恋と真綿のような愛

2023-05-31GENJI キャラ STORYキャラ目線ストーリー,朧月夜,光源氏,源氏物語,紫式部,超訳

GENJI 【別冊】

GENJI essay

Character side story Ⅸ

薔薇のような恋と真綿のような愛
Love like a rose and Love like a floss-silk

Welcome to SenmojiGenji World!!

GENJI 【別冊】GENJI エッセイ

 千年語り継がれる不朽の名作『源氏物語』も実はツッコミどころ満載!?
 源氏物語を【超訳】しながら感じた管理人の個人的な雑感エッセイです。シロウトの感想なので偏った見方をしているかもしれません。


 古典を専門には学んでいないイチ源氏物語ファンの書く軽いタッチのハンドブックです。よかったらご覧になってください。史実、原作と異なる等、明らかな間違いはご指摘いただきたいのですが、基本的にはゆるく、広いお心でお読みいただければと思います。
 お歴々の源氏物語を研究されている方々、現代語訳をなさっている皆様、源氏物語ファンの皆様方、それから紫式部サマ、どうか怒らないでください。お願いします。

 本章はキャラクターストーリーです。
 キャラクター目線で物語を語っています。
 どのキャラクターか想像しながら読んでいただけると嬉しいです。

 あくまでも管理人の「きっとこんな風に想っていたんじゃないかな」との独断と偏見ストーリーです。

story 9. 薔薇のような恋と真綿のような愛
 ~ Love like a rose and Love like a floss-silk ~

✈✈✈ Let’ go to GENJI world ✈✈✈

「ご自分のせいで源氏の君が謹慎なさっていらっしゃるのによく平然としてられるわね」
お宿下がりして実家に帰って密会なんて大胆なことするわねぇ」
「しかも源氏の君は主上うえさまの弟宮よ。主上うえさまもどんなにかお心を痛めていらっしゃるでしょうに」

聞えよがしのひがみやイヤミで私を傷つけているつもりだろうか。御簾や几帳越しに投げつけられる女官たちの蔑みや侮辱など私は気にならない。彼から声もかけられないような女性たちの妬みなど取るに足らないこと。中には彼と関係のある人もいるかもしれないが、まあそのとき限りの軽い関係だろう。

関係がバレればお互いの立場に影響があるのがわかっていてもやめられなかった。逢わずにはいられなかった。抱き合わずにはいられなかった。というか、バレてしまったら、なんて考えていなかったかもしれない。逢っているときのドキドキ感はまるで麻薬のよう。甘美な恋の悦びに酔いしれた。

 後宮に戻り彼に逢えなくなるとまた逢いたくなる。公人としての彼を見かけるとあんなに素敵な彼が私の恋人だと誇らしくなる。私のオンナの部分が疼く。またふたりきりで逢いたい。触れ合いたい。「愛している」とまた囁いてほしい。

 主上うえさまが黙認してくれていることをいいことに私も彼も当然のように実家での密会デートを重ね、とうとう父や姉に知られ、世間からバッシングを受けることになった。彼は主上うえさまへの謀反とそしられる。もともと彼は父や姉とは政敵。特に姉はここぞとばかりに彼を失脚へと追い込もうとしている。

主上さまの妃である私が恋人を持つということはこういうことだった。お互い逢瀬を楽しんでいただけなのに帝への謀反を疑われることになるなんて。

……。彼はそういうことも考えていたのだろうか。朱雀帝妃の私と関係を持って帝位を奪おうとしていたのだろうか。
 結婚前に彼との付き合いが露見したとき、父は朱雀帝とではなく源氏の君との結婚でもよいと考えたこともあった。姉はどうしても息子である朱雀帝と結婚させたかったようで私は入内したが、あのとき彼は父の打診を断っている。

彼はご正室を亡くされたが、私は結婚対象ではなかったらしい。
 幼いころから手元で育てられたという姫君と結婚した。聞けば宮家の脇腹の姫だそうで、少女の頃から二条院ご自宅で囲われていたとか。珠玉の宝といったところだろうか。奔放に女遊びをしていながら本命は大切に育てていたのだ。

 私は数いる遊び相手のひとりでしかなかった。彼とは和歌のやりとりなど恋のかけひきもそれなりにしてきた。「兄の婚約者」「政敵の娘」という私の立場も彼にとっては「恋の媚薬スパイス」だったのかもしれない。禁を冒しているというシチュエーション、気の利いた会話、相性のいい体の関係、彼にとっては「都合のいいオンナ」だったのだろう。

主上さまは私を責めない。父や世間に知れる前も「私と結婚前からの付き合いだということは知っているよ。弟は男の私から見ても魅力的だ。彼に誘われて断れる女性などいないだろうね」などとおっしゃっていらした。

 事が露見し、彼が須磨に蟄居したのちも「あなたたちを引き離すことになって私を恨んでいるのだろうね」とおっしゃられる。主上うえさまに申し訳ないことをしたと思っているのにお恨み申し上げることなど一切ない。

「私ひとりがあなたを満たしてあげられたらいいのだけれどね」
「弟に恋をしてあなたが生き生きとしていられるならそれもいいと思ったんだよ」
「弟が誰をも魅了する男だということを責めるわけにはいかないだろう?」

主上さまからのお言葉は真綿で私の心を締め付ける。女官たちの心無いイヤミなどよりよっぽど心に刺さる。こんなにもお優しい方を私は裏切っていたのだ。そして結果的に彼を政治の表舞台から失脚させてしまった。

 摂関家の流れをくむ藤原一族の娘という高い身分、他の者より優っている容姿や資質、末娘ということで父も姉も私を甘やかしている。私は特別な存在だから何をしても、自由に恋をしても許されるとおごっていた。家柄のおかげで帝の妃にもなれるし、恋人は私の容姿やカラダに夢中になった。でもその心おごりが主上さまを傷つけたばかりか自分の心まで傷をつけることになるとは。美しい薔薇そうびの棘が私の心に刺さる。芳しい甘美な彼との恋には棘があったのだ。

だからといって彼と出会わなければよかったとか、付き合わなければよかったとは思わない。彼が私に興味を持つようにしむけたのは私だし、彼からのアプローチを受け入れたのも私の意思だ。彼とでしか味わえない恋の悦びを満喫した。その恋の代償が心に棘がささったまま生きていくことかもしれない。そして主上さまがお側においてくださるのなら、今度こそ心をこめて主上さまにお仕えしようと思う。おこがましくも愛していただけるのならそのお気持ちにお応えしたいと思う。

刺激的な薔薇の花のような源氏の君との恋と真綿で包み込まれるような主上さまからの愛。おふたりからいただいたお気持ちを胸に私は生きていく。後悔をせずに顔を上げて生きていく。

そんな決意をして主上さまのお側で過ごし十数年。お優しい主上さまとの穏やかな生活だったが、主上さまが後出家あそばされ私は独り身になり実家に戻った。
 即座に訪ねてくる彼。もうあんなことはしないと誓ったのに。結局彼に絆されてしまう。自分の愚かさに呆れる。久しぶりの再会に少しは心は動いたが結局私はまた「都合のいいオンナ」

最愛の奥様のことを想っているくせにまた私のところに時折通ってくる。何かに飢えて何かを求めているようでもあるけれど、その「何か」は私ではないことはわかる。おそらく彼の奥様がたでもない。その「何か」が何か私は知らなくていい。知ろうとも思わない。もう彼との結婚を夢見る歳でもない。彼からの「欲」でなく「愛」を欲しがる歳でもない。こんなことももう終わりにしよう。

今度こそ自由になろう。彼からも。自分の心からも。彼との恋に生き、主上さまから愛していただいた。哀しみ辛さを含めて恋を知り尽くした。あなたとの恋はわたしから終わらせる。生きがいのある人生だったわ。

さようならあなた
さようなら
そしてありがとう
私、ずっとあなたに恋していたわ
薔薇
薔薇のような恋
Character side story Ⅸ 朧月夜 side
薔薇のような恋と真綿のような愛 
 ~ Love like a rose and Love like a floss-silk ~ 

To be continued ✈✈✈

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